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2008年9月28日 - 2008年10月4日

『99%の誘拐』感想:傑作二時間サスペンスドラマ

また本の感想です。

今日紹介する本は、僕が活字を読むようになって間もない頃に手にした、岡嶋二人さんの『99%の誘拐』です。

『99%の誘拐』あらすじ

「末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作!」

まず

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)

です。

吉川英治文学新人賞を受賞した本作の刊行は1988年10月。つまりちょうど20年前になります。
その後、1990年8月に本作は徳間文庫に収録され、2004年には新たに講談社文庫から刊行されて、2005年に「この文庫がすごい!」の1位を獲得しました。
僕が手にしたのは、この講談社文庫版になります。手にした理由は、帯に「この文庫がすごい!の1位を受賞!」と書かれていたからです。とりあえず、今現在評価されている本を読んでみようとしたわけですね。

物語は、昭和51年1月15日に、癌によって47際の若さで亡くなることになった大手カメラメーカー「リカード」の半導体機器開発事業部長・生駒洋一郎が病床で息子宛に綴った手記によって幕を開けます。

かつて洋一郎は、小規模ではありますが大変に先進的な技術力を有する「イコマ電子工業」という半導体製造メーカーを経営していました。しかし、そのイコマを黎明期から支え、技術と経営の後ろ盾になっていた外資企業が不祥事を起こしてしまい、イコマも窮地に立たされます。その際に手をさしのべてきたのが、大手カメラメーカーのリカードでした。リカードは市場が拡大していた半導体事業に乗り出そうとして、イコマの技術力を欲していたのです。
しかしながら洋一郎は、大企業であるリカード側からの合併の提案が事実上の吸収に他ならないとして、独立の道を模索します。彼は私財の全てをなげうって5000万円を用意し、再起を図ろうとしたのですが、その矢先に、彼の息子であり、幼稚園児であった生駒慎吾が誘拐されてしまうのです。身代金は5000万円。洋一郎は、愛する慎吾を取り戻すため、事業の再起の為の資金である5000万円を失います。結果、慎吾は無事に解放され、イコマはリカードに吸収合併、そして事件は未解決のまま、闇の中に消えていったのでした。

その洋一郎が病床で綴った手記の最後にはこう書かれていました。

「慎吾、強い人間になって下さい。私は弱い人間だった。最後までやり遂げることができない人間だった。慎吾、お前は違う。やり遂げて下さい。弱い人間は私だけでいい。慎吾、お父さんを許して下さい」

それから12年。
リカードの優秀な社員となっていた生駒慎吾は、かつて父に辛酸を嘗めさせた誘拐事件をなぞるように、リカードに対する完全犯罪を企てるのです。

と、設定からして燃えるものがあります。

リカードの社長の孫を誘拐しながら、1人のリカード社員として、その身代金受け渡しの担当者になる慎吾。自作自演の状況で、リカードと警察当局に協力して信頼を得ながら、強固なる意志と、用意周到かつ臨機応変な思考で彼らを騙し続ける慎吾の姿は圧巻であり、本作の魅力の1つです。優れたエンターテインメント性を有した二時間サスペンスドラマの傑作を見ているような気分に誘ってくれます。

また、本作の大きな魅力は、ハイテク機器を存分に用いた犯行であるということです。
「ハイテク」なんて言葉は、一時期に比べると、もうあまり聞かなくなりましたが、ともかくこの作品では、パソコン、パソコン通信、BBS、チャット、OCR・・・等々、ハイテク要素が満載です。これらは、2008年の現在に生きる我々から見ると、古臭さを感じることも否めません。そしてそれが本作の評価を落としてしまいそうな面もありますが、それ以上にこうした要素を用いた作者の先見性に驚くことの方が大きいかと思われます。


尚、「岡嶋二人」とは、徳山諄一さんと井上泉さんによる共著のペンネームなのですが、本作は、事実上井上泉=井上夢人さんの手によるものだと認識しておられる方もいるようです。
本作の刊行後間もなくして「岡嶋二人」は解散することになるのですが、興味がありましたら、解散前、解散後の作品を読み比べてみるのも面白いかと思います。


岡嶋二人『99%の誘拐』

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)

99%の誘拐 (講談社文庫) Book 99%の誘拐 (講談社文庫)

著者:岡嶋 二人
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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『容疑者Xの献身』感想:純愛?

こんばんは。
久しぶりに本の感想でも。

というわけで、今回は文庫化&映画化を記念して、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』の感想です。

『容疑者Xの献身』あらすじ

「天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うために完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長編、直木賞受賞作。」

まず

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(10/10☆満点!)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)

です。
今回の感想は(も?)かなり長いです。

本作は現代において一二を争うベストセラー作家である東野圭吾さんの直木賞受賞作であり、2005年度の「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」で各1位、さらには「第6回本格ミステリ大賞」にも輝いたという、箔が付きに付いた作品です。
また、先に上梓されていた湯川学准教授(助教授)を中心にした「ガリレオシリーズ」初の長編でもあります。この「ガリレオシリーズ」は昨年末(2007年10~12月)フジの月9でドラマ化され、好調な視聴率を残しました。
故に、活字を愛してる方々の間ではもちろん、そうでない方々の間でも本作の知名度は抜群に高いことが予想され、ドラマをきっかけにして活字の世界に興味を持ち、本作が「初東野圭吾作品」になったという方もたくさんおられるのではないかと思います。

さて、そんな本作の満足度ですが、当初それは僕の中で非常な「ぶれ」を持っていました。
というのも、僕は、この作品の中で「石神がやったこと」を上手く消化できなかったのです。

東野圭吾さんは本作を「私の考えうる最大の純愛、最高のトリック」と称し、また多くの読者の方が「感動した」「涙した」との感想を書き綴られているわけですが、僕にはどうしても「石神がやったこと」が「純愛」とは思えなかったのです。

もちろん僕がこうした感想を抱いたのは、僕自身が、「恋愛」「純愛」なるものをよく理解していないということも大きいかと思います。僕は東野圭吾さんの『秘密』が大好きで、大いに心を揺さぶられたのですが、そう感じなかった読者の方々も大勢おられます。それは個々人の性別や年齢、恋愛・人生経験等々といったものが大きく関わってると考えられるからです。どちらの考えが正しい、と言えるものでは無いと思います。そしてそうした「受け止め方の違い」が、『秘密』の大きな魅力だと思っています。
『容疑者Xの献身』でも同様のことが言える面がありますが、少なくとも東野圭吾さんご自身が「最大の純愛」と仰られているのですから、「石神がやったこと」を「純愛」と受け止められなかった場合、本作への個人的な評価は必然的に下がるのも致し方ありません。

ともかく僕はそうして本作の大きなテーマである「石神の純愛と献身」を理解できなかったものですから、その読後感はすこぶる悪く、満足度も非常に低いものでした。
他にもいくつか気になることがを挙げれば、文章表現に「おやっ?」と感じることがあったこと(これは僕の文字を追うテンポの問題の方が大きいかと思います・・・)、石神が花岡靖子(と美里)に想いを寄せることになる出来事が、「最大の純愛」のきっかけとしては陳腐に感じられたこと(まあ、人が人を好きになるきっかけは他愛もないことがほとんどですが・・・)等があります。粗探しですが。
あとは、アレです。こういうたくさんの賞を冠した作品なので、僕は自分で評価のハードルを上げていたというのがあります。人気作家には付きものの問題ですね。

さてさて、そうして僕は何だかあまり満足も出来ずに読了となったのですが、時間が経ち、読了後間もない僕の頭を占めていた感情的な思考が、次第に論理的なそれへと変わっていくと、本作への評価はたちまち上昇していくことになりました。

本作にはいくつもの優れた点が存在しています。

まず、トリックが見事です。伏線も実にフェアです。そしてそのトリックの難度が絶妙なのです。

ミステリは時に誰にも思いもしないようなトリックをして、その作品の評価を高めようとすることがあります。ですが、あまりにも難解で突飛なトリックが、読者の興を醒ましてしまうことも少なくありません。
『容疑者Xの献身』のトリックを完全に暴けなかった僕が言うのもなんですが、本作のトリックの難度はすこぶる高いというわけではありません(もちろん安易なものでもありません)。おそらく湯川准教授のような慧眼を発揮して、トリックを解かれた読者の方も多いと思われます。本作におけるトリックは、ちょうど花岡母娘と事件との間の関連性を強く疑いながらも、捜査の手が空振りを繰り返すことになってしまった警察のように、多くの読者も、石神の仕掛けたトリックの片鱗を掴み、なんとなく解けそうだなぁ…と思いながら、それを完全に具体化出来ない、そういうような難度だと思います。
この「あとちょっと感」は、東野圭吾さんの平易な文体と相俟って、可読性を非常に高めています。

また、平易な文体で複雑な物語を描いてるのは相変わらず流石です。また、作品全体の中で思わぬことが伏線になっていたりしていて、無駄な描写が非常に少なくなっています。これも流石だと思いました。
その他には、それまでの「ガリレオシリーズ」と違って、「理系で科学」な知識よりも「観察力」や「思考の盲点」がトリックと推理の鍵になっている点。これは好みの分かれるところでしょうが、高度に専門的な知識を用いないことで、結果的に多くの読者を獲得したとも思います。

さらには、友人同士である湯川准教授と草薙刑事の距離感も優れた点のように思います。「ガリレオシリーズ」では、湯川と草薙が事件解決のために協力し合うのですが、本作では、湯川と石神がともに才能を認め合った「古い親友にして好敵手」であることから、湯川は草薙に全面的に協力しません。それ故に本作は、湯川対石神という単純な構図ではなく、湯川と石神の対決から逸れた位置にある草薙の視座を有しており、「石神が仕掛けたトリックは何なのか」と「湯川は何をしようとしているのか。そして何をして石神のトリックに気づいたのか」というミステリとしての広がりを持った物語の展開をしていきます。これも見事だと思いました。
そしてこのような展開をするに至った人物の相関関係…帝都大学同期生の石神・湯川・草薙の間の「友情」こそ、「純愛」と「献身」よりも、彼らの悲しい「友情」こそ、僕が本作の中で最も感銘を受け、心動かされた点でした。

最後に、オススメ度は満点です。
あらすじには「ガリレオシリーズ初の長編」と書かれていますが、平易な文体と無駄の少ない構成の為に非常に可読性は高く、中編感覚で読み終えることが出来ると思われます。
また、様々な賞を冠した作品ですので、それに挑戦する感じで読むのもいいと思います。感想と評価は分かれると思いますが。

最後の最後に。
来月ついに封切られる『劇場版:容疑者Xの献身』
楽しみにしているのですが、配役がちょっと不安です。特に石神の配役はどうかな・・・と。
いい意味で僕の予想を裏切ってくれることを期待します。

東野圭吾『容疑者Xの献身』

個人的オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(10/10☆満点)
個人的満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)

容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7) Book 容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7)

著者:東野 圭吾
販売元:文藝春秋
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ロジクールのMX1100マウスのステルス・サムボタンがおかしいので分解してみた

こんばんは。
だいぶ間が空いてますがまたちょくちょく更新していこうと思います。

今回はタイトルの通りです。

つい先日、ロジクールが新しいMXシリーズのマウスを出しました。

Mx1100_00_4

某家電量販店で買いました。
ところが「ステルスサムボタン」というのが全然使えません。マウスを握りつぶすくらいの勢いで押さないと反応しません。
仕様かと思ったら不具合らしいことを価格コムで知りました。
お店に持って行けば、確実に初期不良ということで交換してもらえると思います。
ですが、貧乏性なので、お店に行く交通費1000円あまりがもったいないと感じます。
それにネガティブ思考なので、交換してもらったマウスが同じ症状を起こすと思うと怖いです。
だからといって、店頭で正常に動作することを試させてもらう勇気を持ち合わせていません。
何より引きこもりなので、街に出るのがものすごく億劫です。

ロジクールで交換してもらうことも確実な手です。
けれど以前にチャタリングの問題でMX1000というマウスを交換してもらったときに、ものすごく時間がかかってしょんぼりしました。

今すぐこのマウス、MX1100を使いたいです。なのにロジクールの電話サポートは土日はお休みです。

だから、何を狂ったか、夜中に分解して直してみようと思いました。
PCとか理系全般の知識に疎いのに・・・その上、もう保証を受けることが出来なくなるのに・・・でも、何となく、ボタンを押し込めば反応するので、そこらへんをどーにかすればどーにかなるんじゃないかなー・・・と思ったわけです。

さあ、分解。

とりあえず底のソールにネジが隠れてるらしいので、ソールをピンセットで剥がしてみたら、確かにネジが。

Mx1100_01

ソールを剥がして現れたダビデの星みたいなネジ穴にびっくりしたけど、1.6mmのマイナスドライバで意外とすんなりネジを抜くことに成功。
けれどなかなか底面とカバーが外れてくれません。力いっぱいやってもだめ。
もしやと思って電池を入れる場所のシールを上から指でなぞったら、穴がある感触が。

Mx1100_02

シールは端から剥がすと綺麗に取れた。
だけど何かシールの裏にサインペンのようなあとがついてた。
分解したかどうかを判断するためなのかな?
よく分からないけど、とりあえずここまできたらもう保証は受けられないからどうでもいい。

Mx1100_03_2

分解したら↑みたいな感じに。
当然だけど上蓋と繋がってるわけで・・・乱暴に扱ってケーブル引き抜くとこだった・・・。

Mx1100_04

肝心のステルスサムボタン部分を分解。
赤丸の4カ所のネジをはずす。
この部分のネジは+ドライバの00サイズので綺麗に回せた。
青丸の箇所のネジも同じく00+ドライバで。

Mx1100_neji

外したネジ。
上が内部のネジ。+ドライバ00サイズので外れた。
下がマウスの底に隠れてたネジ。-ドライバの1.6mmので外れた。
どちらも小さいので、作業の間に何度か見失うことに・・・。

Mx1100_05_2

赤丸が内部機構のネジ穴箇所。
青丸がマウス底辺のネジ穴箇所。

Mx1100_omuron

ちなみにマウスの左クリック・右クリックのスイッチにオムロンの文字。
チャタリングを起こさないで下さい。お願いします。

Mx1100_06

マウスの上蓋からステルスサムボタン部分を外したところ。

Mx1100_08_2

ステルスサムボタンのスイッチを穴から観察。
なんか半分隠れてるけど、これが仕様なのかな?


Mx1100_07

デジカメのフォーカスが・・・大失敗。
とりあえず5枚目の画像の青丸箇所のネジを外して、ステルスサムボタンの基盤を外してみる。
それで分かったのは、デフォルトで進む・戻るの機能が割り当てられているスイッチ(多分・・・解像度変更のスイッチだったかな?うろ覚えです・・・)とステルスサムボタンのスイッチが一緒だったこと。

そこで分解したままマウスに通電して、スイッチを指でクリクリしていたら、正常に反応することが判明。
やはりスイッチの問題では無い模様・・・多分。

Mx1100_bou

そこでステルスサムボタンのスイッチを押すラバー下の棒の丈を伸ばすことに。

Mx1100_pate00

何で丈を延ばすか考えたところ、フィギュア修繕用に持っていた、エポキシパテ軽量タイプを使ってみた。
接着剤を使わないで済むし、固まるまで時間があるので微調整が出来る。
それに固まってからもカッターで削れるので便利。

Mx1100_pate01

何度かスイッチとの感覚を試しながら、少しずつ削って微調整。
ベストな感触が得られたら、逆の手順でネジをくるくる。

というわけで、親指で軽く押し込めばすぐに反応してくれるように!
案外簡単に直ってくれました。
クリック音が気持ちいいです。

とまあMX1100の分解修理を終えたわけですが、やっぱりあまり賢い方法ではありませんね。保証も受けれなくなりますし。

とりあえず同じ症状で悩んでおられる方は、購入した店舗で交換してもらうのが一番だと思います。
それから何年か使って、保証期間内に不具合が起きれば、今度はロジクールのサポートで新品と交換してもらいましょう。

分解はくれぐれも自己責任で!

ロジクール MX1100 コードレス レーザーマウス MX-1100 CE ロジクール MX1100 コードレス レーザーマウス MX-1100

販売元:ロジクール
発売日:2008/09/19
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