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2008年3月23日 - 2008年3月29日

『同級生』感想:幻想的少女の献身

※この記事は昨年書かれたものを加筆修正したものです。

東野圭吾さんが本を読むようになったきっかけとなる本『アルキメデスは手を汚さない』の感想と関連して、この作品の感想を。

まず最初に本作の個人的満足度など・・・。

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆★(8.5/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆☆(9/10☆)

です。

『アルキメデスは手を汚さない』を読んでいて浮かんだのは、同じ学園を舞台とした青春ミステリの『放課後』と、この『同級生』でした。
どちらも好きな作品ですが、どっちか一つと言われれば、迷わず『同級生』を。
そして『アルキメデスは手を汚さない』を読んでる際に強く浮かんだのも『同級生』でした。

『同級生』は『アルキメデスは手を汚さない』と同様、ある女子高生-野球部のマネージャーだった宮前由希子-の死から物語が始まります。そしてまた『アルキメデス~』と同様、その亡くなった少女は妊娠していたのです。

主人公で野球部のキャプテンである西原荘一は、宮前由希子が妊娠していた事実を知ると、そのお腹の子が自分の子であることを確信し、そしてそれを公表します。
さらに宮前由希子の死に疑問が生じると、それを解決すべく動き、ある教師が怪しいと思うに至って、衆目の中でそれを追求するのです・・・が、後日その教師が絞殺体となって発見されることで、逆に荘一に教師殺害の疑惑の目が向けられることになってしまうのです・・・。

誰が犯人か?
そしてトリックは?・・・という謎と同時に、本作品の大きな魅力となっているのが、青春ミステリの肝、高校生らの心情とその人間関係です。
あるトリックを解くことで世界観が裏返るようなことがあるように、本作でもすべての謎が解けたとき、おそらく読者は主人公を始めとした登場人物への印象が変わってくるのではないでしょうか?
少なくとも自分はそうでした。

自分は『同級生』の登場人物が好きであり、だからこそ東野圭吾さんの作品の中でも特に好きなものの一つとなっています。
特に物語のキーとなる水村緋絽子には「萌え」ました。
けれど彼女、いかにも男性がイメージとして抱きそうな都合のいい女性(少女)像という感じで(だからこそ自分は萌えたのですが)、現実感に乏しい感じは否めません。
男性の、男の幻想が生み出した少女って感じがするのですよね。ま、現実感に乏しいから、何となく謎めいて神秘的に感じたのも事実ですが。

この水村緋絽子と主人公の西原荘一に対してどのような印象を抱くかで、本作の感想はかなり変わってくると思います。


ちなみに本作、教職に就いておられる方は読むと嫌な気分になるかもしれません。
その理由は東野圭吾さん自身による後書きで・・・。

後書きは東野圭吾ファンなら必見だと思います。

『同級生』

個人的オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆★(8.5/10☆)
個人的満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆(9/10)

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著者:東野 圭吾
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『アルキメデスは手を汚さない』感想:時代を経て

※この記事は昨年書かれたものを加筆修正したものです。

青春ミステリを分野として確立したとされる第19回江戸川乱歩賞受賞作、小峰元さんの『アルキメデスは手を汚さない』を本日読了しました。

まず最初に

個人的オススメ度は☆☆☆☆★(4.5/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆(7/10☆)

です。

さて、まずはこの本と自分について。
自分はこの本の存在を東野圭吾さんの作品の後書きかなんか(だったと思うのですが・・・)で初めて知りました。約2年前のことです。
東野圭吾さんが本を読むようになったのは、この作品との出会いがきっかけだったとか。
それで気になって調べてみたら、作家の小峰元さんは1921年生まれ。
本作の発表も1973年。随分と古い作品なのだなぁと思ったものです。

ともかくも大好きな作家・東野圭吾さんのいわば出発点になった作品ということで、いつかは読んでみようと思ってました。
そうしていたところ、昨年文庫版が新装復刊されることとなり、書店で平積みされていた本作を手に取ったというわけです。

ちなみに、もし東野圭吾さんの後書きで本作の存在を知ることがなかったとしても、書店で本作を目にしたとしたら、多分自分は手に取っていたと思います。

『アルキメデスは手を汚さない』という興味を惹かないではいられないタイトル。
そして新装版の何とも言えない雰囲気を醸し出している・・・どこか仄暗い印象を受ける空と鉄塔、そして1人佇む女子高生という・・・装丁(書店やamazonとかで見てくれると幸いです)。
この表紙と裏表紙の宣伝文句が、自分をレジに走らせていたことでしょう。

さらにちょっと付け加えておくと、本書は乱歩賞を受賞した作品の中でも特にベストセラーになったものらしく、単行本部門では1995年度乱歩賞受 賞作・藤原伊織さんの『テロリストのパラソル』に抜かれるまで歴代セールス1位、文庫版の方では今もって堂々のセールス1位作品なんだそうです。
「伝説の青春ミステリ」などと紹介されるのも、あながち大げさではないのかもしれませんね。

さて、本題の感想についてですが、本作は、「今」の、「21世紀の現代」に多く出回ってる青春ミステリを読んでると、その時代感の隔たりにとまどいを覚えるかもしれません。
かくいう自分がそうでした。

青春ミステリと銘打っておきながら、序盤は不可解な「アルキメデス」という言葉を残して死んだ女子高生・美雪の父(叩き上げの土建屋の親父さん) が中心になって話が進み、その後もベテラン刑事と若手刑事の捜査陣コンビが度々主役のように動き回ったり、内容についても、会社員とOLの不倫、はたまた 鉄道や時刻表を使ったトリック(というかアリバイ崩し)だとかが出てきて、青春ミステリというよりは、いかにもテレビの2時間サスペンスドラマっていう感 じの要素がてんこ盛りになってます。
なのでそういう点では(今風の)青春ミステリって感じはしません。
30年以上前の作品なので当然といえば当然なのかもしれませんが。

あと、本書の解説でも評されてましたが、ミステリとしてのトリックと解決法は小粒。
なのでそういうのを期待するのもキツいかもしれません。

しかししかし、ぶっちゃけそれでもいいのかもしれませんね。
本書の最も魅力的な謎(ミステリ)は、高校生たち登場人物たちの心情や動機・・・(そう、動機!)、そして何より『アルキメデスは手を汚さない』とはどういうことか?ということだと思いますので・・・。

うん、でもやっぱ時代を経てますから、今読むと、彼らの心情や動機に特段驚かなかったり、またはそういう考え方に同調できないっていう人も多いと思います。
何度も言いますが時を経てますしね。

それでも彼らの青春像は虚像ではないと思います。
若者と呼ばれる者には、如何なる時代になろうとも決して変わらない不偏で堅い信念のような部分と、時代の変化を敏感に感じ取り、柔軟に変わっていく敏感で不安定な部分がありますから。
ある時代の学生は侃々諤々の哲学論議を繰り返し、権力に反抗し闘争を繰り返しました。
ある時代の学生は政治的無関心となり、レジャーに金にと群がりもしました。
どっちの学生が・・・若者が、本物の若者であるとかいうことは出来ません。
どっちもその時代その時代の若者の真の姿です。
この作品も、今読めば古く感じるかもしれませんが、刊行当時の若者の姿を上手く切り取ったからこそ、ここまでのベストセラーになったのではないでしょうか?

そして読んでみて感じた、今の若者と、当時の若者という時代を経たジェネレーションギャップ。
そして作品の中では、当時の大人と若者の間での、世代を隔てたジェネレーションギャップ。
このジェネレーションギャップから生まれる相互理解の難しさも、本作の重要なテーマの1つかもしれません。

そういうことを考えながら読むと、より楽しむことが出来ました。
ただ他人に「これ面白いよ。読んでみなよ」とは勧めにくいですね・・・。
東野圭吾、青春ミステリ(とその歴史)とかに特に興味がある人へならまあ・・・。


『アルキメデスは手を汚さない』

個人的オススメ度:☆☆☆☆★(4.5/10☆)
個人的満足度:☆☆☆☆☆☆☆(7/10☆)

ちなみに、自分は終盤とラストでの高校生たちの心情吐露の場面は何となく好きです。
いつの時代になっても、「ああ、そんな理由(動機)で・・・」っていう感じは変わりませんね。

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫) Book アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

著者:小峰 元
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『流星の絆』感想:物語は流星のような速度で・・・

東野圭吾さんの最新刊『流星の絆』を先ほど読了致しました。

まず初めに

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆★(8.5/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆★(8.5/10☆)

です。
久しぶりに読んだ大好きな東野圭吾さんの作品ということで、ちょっと・・・かなり甘めの点数になってます。

では、以下、ネタバレを含みますので未読の方はご注意を。



『流星の絆』とは、両親を惨殺された幼い三兄妹が、その仇討ちを流星の下に誓い、事件から14年後に復讐劇を仕掛ける、という粗筋の作品です。

両親惨殺事件当時、小学六年生だった長男の功一、四年生だった次男の泰輔、そして一年生だった長女の静奈を主人公にして、物語は展開していきます。
東野圭吾作品を精読されてる方なら、物語の大まかな背景が『白夜行』などと被ってることが気になるでしょうが、相変わらずの東野節といいますか、約500ページに収められた物語は大変読みやすく、そして自分を惹き付け、あっという間に読了となりました。

ただ読了後にamazonなどのレビューを見て思ったのですが、そのレビューで指摘されてる方がいますように、帯文の「息もつかせぬ展開、張り巡 らされた伏線、驚きの真相、涙が止まらないラスト。すべての東野作品を超えた現代エンタメの最高峰」という宣伝文句は誇張が過ぎるような気がしました(自 分は結構涙もろい方でよく泣いてしまうのですが、本書のラストでは涙は流れませんでした)。
ラストは、よく言えば大団円。意地悪く言えば、ありきたりで少々陳腐なものだったような気がします。

また、伏線も事件の真相も素晴らしいとは思うのですが(ヴァン・ダインの二十則を破ってますが、自分は全然気になりません)、帯文の宣伝文句に煽られて期待しすぎたせいでしょうか、そうきたか!!!といった気分にはなりませんでした。
登場人物・・・即ち犯人候補があまり多くない作品にあって、一応犯人や事件の全貌を推理しながら読み、それが見事に外れた自分が言うのもおこがましいのですが・・・^^;

ところでこの物語の鍵の一つとなるのは、本の帯にでかでかと「兄貴、妹は本気だよ。俺たちの仇の息子に惚れてるよ」と書かれてるとおり、「妹の恋心」です。
そしてもう一つの鍵は、「絆」でしょうか。

しかしこの二つの鍵は、登場人物に感情移入し共感しなければ、その物語の鍵としての効果も減じてしまうように思います。
三兄妹に共感できなければ、まさしく流星のように、本書の記憶も頭の中でスッと流れて消えてしまうかもしれません。

ただ、読みやすい作品であることには変わりはないと思いますので、東野圭吾作品を未読の方に、「東野圭吾入門書」として十分オススメできる出来であるとは思います。

あと、読むとハヤシライスが食べたくなると思います・・・。


『流星の絆』

個人的オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆★(8.5/10☆)
個人的満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆★(8.5/10☆)


流星の絆 Book 流星の絆

著者:東野 圭吾
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