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『容疑者Xの献身』感想:純愛?

こんばんは。
久しぶりに本の感想でも。

というわけで、今回は文庫化&映画化を記念して、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』の感想です。

『容疑者Xの献身』あらすじ

「天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うために完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長編、直木賞受賞作。」

まず

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(10/10☆満点!)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)

です。
今回の感想は(も?)かなり長いです。

本作は現代において一二を争うベストセラー作家である東野圭吾さんの直木賞受賞作であり、2005年度の「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」で各1位、さらには「第6回本格ミステリ大賞」にも輝いたという、箔が付きに付いた作品です。
また、先に上梓されていた湯川学准教授(助教授)を中心にした「ガリレオシリーズ」初の長編でもあります。この「ガリレオシリーズ」は昨年末(2007年10~12月)フジの月9でドラマ化され、好調な視聴率を残しました。
故に、活字を愛してる方々の間ではもちろん、そうでない方々の間でも本作の知名度は抜群に高いことが予想され、ドラマをきっかけにして活字の世界に興味を持ち、本作が「初東野圭吾作品」になったという方もたくさんおられるのではないかと思います。

さて、そんな本作の満足度ですが、当初それは僕の中で非常な「ぶれ」を持っていました。
というのも、僕は、この作品の中で「石神がやったこと」を上手く消化できなかったのです。

東野圭吾さんは本作を「私の考えうる最大の純愛、最高のトリック」と称し、また多くの読者の方が「感動した」「涙した」との感想を書き綴られているわけですが、僕にはどうしても「石神がやったこと」が「純愛」とは思えなかったのです。

もちろん僕がこうした感想を抱いたのは、僕自身が、「恋愛」「純愛」なるものをよく理解していないということも大きいかと思います。僕は東野圭吾さんの『秘密』が大好きで、大いに心を揺さぶられたのですが、そう感じなかった読者の方々も大勢おられます。それは個々人の性別や年齢、恋愛・人生経験等々といったものが大きく関わってると考えられるからです。どちらの考えが正しい、と言えるものでは無いと思います。そしてそうした「受け止め方の違い」が、『秘密』の大きな魅力だと思っています。
『容疑者Xの献身』でも同様のことが言える面がありますが、少なくとも東野圭吾さんご自身が「最大の純愛」と仰られているのですから、「石神がやったこと」を「純愛」と受け止められなかった場合、本作への個人的な評価は必然的に下がるのも致し方ありません。

ともかく僕はそうして本作の大きなテーマである「石神の純愛と献身」を理解できなかったものですから、その読後感はすこぶる悪く、満足度も非常に低いものでした。
他にもいくつか気になることがを挙げれば、文章表現に「おやっ?」と感じることがあったこと(これは僕の文字を追うテンポの問題の方が大きいかと思います・・・)、石神が花岡靖子(と美里)に想いを寄せることになる出来事が、「最大の純愛」のきっかけとしては陳腐に感じられたこと(まあ、人が人を好きになるきっかけは他愛もないことがほとんどですが・・・)等があります。粗探しですが。
あとは、アレです。こういうたくさんの賞を冠した作品なので、僕は自分で評価のハードルを上げていたというのがあります。人気作家には付きものの問題ですね。

さてさて、そうして僕は何だかあまり満足も出来ずに読了となったのですが、時間が経ち、読了後間もない僕の頭を占めていた感情的な思考が、次第に論理的なそれへと変わっていくと、本作への評価はたちまち上昇していくことになりました。

本作にはいくつもの優れた点が存在しています。

まず、トリックが見事です。伏線も実にフェアです。そしてそのトリックの難度が絶妙なのです。

ミステリは時に誰にも思いもしないようなトリックをして、その作品の評価を高めようとすることがあります。ですが、あまりにも難解で突飛なトリックが、読者の興を醒ましてしまうことも少なくありません。
『容疑者Xの献身』のトリックを完全に暴けなかった僕が言うのもなんですが、本作のトリックの難度はすこぶる高いというわけではありません(もちろん安易なものでもありません)。おそらく湯川准教授のような慧眼を発揮して、トリックを解かれた読者の方も多いと思われます。本作におけるトリックは、ちょうど花岡母娘と事件との間の関連性を強く疑いながらも、捜査の手が空振りを繰り返すことになってしまった警察のように、多くの読者も、石神の仕掛けたトリックの片鱗を掴み、なんとなく解けそうだなぁ…と思いながら、それを完全に具体化出来ない、そういうような難度だと思います。
この「あとちょっと感」は、東野圭吾さんの平易な文体と相俟って、可読性を非常に高めています。

また、平易な文体で複雑な物語を描いてるのは相変わらず流石です。また、作品全体の中で思わぬことが伏線になっていたりしていて、無駄な描写が非常に少なくなっています。これも流石だと思いました。
その他には、それまでの「ガリレオシリーズ」と違って、「理系で科学」な知識よりも「観察力」や「思考の盲点」がトリックと推理の鍵になっている点。これは好みの分かれるところでしょうが、高度に専門的な知識を用いないことで、結果的に多くの読者を獲得したとも思います。

さらには、友人同士である湯川准教授と草薙刑事の距離感も優れた点のように思います。「ガリレオシリーズ」では、湯川と草薙が事件解決のために協力し合うのですが、本作では、湯川と石神がともに才能を認め合った「古い親友にして好敵手」であることから、湯川は草薙に全面的に協力しません。それ故に本作は、湯川対石神という単純な構図ではなく、湯川と石神の対決から逸れた位置にある草薙の視座を有しており、「石神が仕掛けたトリックは何なのか」と「湯川は何をしようとしているのか。そして何をして石神のトリックに気づいたのか」というミステリとしての広がりを持った物語の展開をしていきます。これも見事だと思いました。
そしてこのような展開をするに至った人物の相関関係…帝都大学同期生の石神・湯川・草薙の間の「友情」こそ、「純愛」と「献身」よりも、彼らの悲しい「友情」こそ、僕が本作の中で最も感銘を受け、心動かされた点でした。

最後に、オススメ度は満点です。
あらすじには「ガリレオシリーズ初の長編」と書かれていますが、平易な文体と無駄の少ない構成の為に非常に可読性は高く、中編感覚で読み終えることが出来ると思われます。
また、様々な賞を冠した作品ですので、それに挑戦する感じで読むのもいいと思います。感想と評価は分かれると思いますが。

最後の最後に。
来月ついに封切られる『劇場版:容疑者Xの献身』
楽しみにしているのですが、配役がちょっと不安です。特に石神の配役はどうかな・・・と。
いい意味で僕の予想を裏切ってくれることを期待します。

東野圭吾『容疑者Xの献身』

個人的オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(10/10☆満点)
個人的満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)

容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7) Book 容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7)

著者:東野 圭吾
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