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『99%の誘拐』感想:傑作二時間サスペンスドラマ

また本の感想です。

今日紹介する本は、僕が活字を読むようになって間もない頃に手にした、岡嶋二人さんの『99%の誘拐』です。

『99%の誘拐』あらすじ

「末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作!」

まず

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)

です。

吉川英治文学新人賞を受賞した本作の刊行は1988年10月。つまりちょうど20年前になります。
その後、1990年8月に本作は徳間文庫に収録され、2004年には新たに講談社文庫から刊行されて、2005年に「この文庫がすごい!」の1位を獲得しました。
僕が手にしたのは、この講談社文庫版になります。手にした理由は、帯に「この文庫がすごい!の1位を受賞!」と書かれていたからです。とりあえず、今現在評価されている本を読んでみようとしたわけですね。

物語は、昭和51年1月15日に、癌によって47際の若さで亡くなることになった大手カメラメーカー「リカード」の半導体機器開発事業部長・生駒洋一郎が病床で息子宛に綴った手記によって幕を開けます。

かつて洋一郎は、小規模ではありますが大変に先進的な技術力を有する「イコマ電子工業」という半導体製造メーカーを経営していました。しかし、そのイコマを黎明期から支え、技術と経営の後ろ盾になっていた外資企業が不祥事を起こしてしまい、イコマも窮地に立たされます。その際に手をさしのべてきたのが、大手カメラメーカーのリカードでした。リカードは市場が拡大していた半導体事業に乗り出そうとして、イコマの技術力を欲していたのです。
しかしながら洋一郎は、大企業であるリカード側からの合併の提案が事実上の吸収に他ならないとして、独立の道を模索します。彼は私財の全てをなげうって5000万円を用意し、再起を図ろうとしたのですが、その矢先に、彼の息子であり、幼稚園児であった生駒慎吾が誘拐されてしまうのです。身代金は5000万円。洋一郎は、愛する慎吾を取り戻すため、事業の再起の為の資金である5000万円を失います。結果、慎吾は無事に解放され、イコマはリカードに吸収合併、そして事件は未解決のまま、闇の中に消えていったのでした。

その洋一郎が病床で綴った手記の最後にはこう書かれていました。

「慎吾、強い人間になって下さい。私は弱い人間だった。最後までやり遂げることができない人間だった。慎吾、お前は違う。やり遂げて下さい。弱い人間は私だけでいい。慎吾、お父さんを許して下さい」

それから12年。
リカードの優秀な社員となっていた生駒慎吾は、かつて父に辛酸を嘗めさせた誘拐事件をなぞるように、リカードに対する完全犯罪を企てるのです。

と、設定からして燃えるものがあります。

リカードの社長の孫を誘拐しながら、1人のリカード社員として、その身代金受け渡しの担当者になる慎吾。自作自演の状況で、リカードと警察当局に協力して信頼を得ながら、強固なる意志と、用意周到かつ臨機応変な思考で彼らを騙し続ける慎吾の姿は圧巻であり、本作の魅力の1つです。優れたエンターテインメント性を有した二時間サスペンスドラマの傑作を見ているような気分に誘ってくれます。

また、本作の大きな魅力は、ハイテク機器を存分に用いた犯行であるということです。
「ハイテク」なんて言葉は、一時期に比べると、もうあまり聞かなくなりましたが、ともかくこの作品では、パソコン、パソコン通信、BBS、チャット、OCR・・・等々、ハイテク要素が満載です。これらは、2008年の現在に生きる我々から見ると、古臭さを感じることも否めません。そしてそれが本作の評価を落としてしまいそうな面もありますが、それ以上にこうした要素を用いた作者の先見性に驚くことの方が大きいかと思われます。


尚、「岡嶋二人」とは、徳山諄一さんと井上泉さんによる共著のペンネームなのですが、本作は、事実上井上泉=井上夢人さんの手によるものだと認識しておられる方もいるようです。
本作の刊行後間もなくして「岡嶋二人」は解散することになるのですが、興味がありましたら、解散前、解散後の作品を読み比べてみるのも面白いかと思います。


岡嶋二人『99%の誘拐』

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆(8/10☆)

99%の誘拐 (講談社文庫) Book 99%の誘拐 (講談社文庫)

著者:岡嶋 二人
販売元:講談社
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