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『十角館の殺人』感想:その1行で世界は変わった

今日は、綾辻行人さんのデビュー作『十角館の殺人』の感想です。

まず

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(10/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆☆(9/10☆)

です。

故あって3年ほど前からベッドで過ごすことが多くなった私は、その頃から活字を読むようになりました。
それ以前はともかく活字というものをほとんど一切読んでこなかったため、一体どんなものを読めばいいのか迷ったのですが、友人から勧められ本作を手に取ったのでした。

友人曰く「ともかく読んでみろ」と。

何でも本作は、ミステリの世界において「新本格」「綾辻行人以降」という言葉を生み、一種のメルクマールとなった作品だと言うので、「じゃあ、すごいんだろうな」と思い、軽~い気持ちで読んでみるかと思ったのですが・・・。

活字慣れしていなかったこともあって、ともかく序盤は読みづらく、ミステリ研のメンバーが、高名なるミステリ作家たちの名を渾名にして呼び合うのも「なんだかな~」と思ったものです(私は漫研などで「○○先生」と呼び合うのもすっごく苦手です)。
しかし「ミステリにふさわしいのは、時代遅れと云われようが何だろうが、やっぱりね、名探偵、大邸宅、怪しげな住人たち、血みどろの惨劇、不可能犯罪、破天荒な大トリック・・・・・・。絵空事で大いに結構。要はその世界の中で楽しめればいいのさ。但し、あくまで知的に、ね」と言って社会派ミステリには辟易だという「エラリイ」の台詞には、「うんうん」と頷いていました。「そうだなぁ・・・僕もそっちの方が好きだ」という具合に。

そうして始まった物語は、大学のミステリ研の面々が、半年前に凄惨な四重殺人事件が起きた大分の沖合にある孤島の館を訪れ、そこでの出来事が描かれる「島の章」と、島に行かずに大分本土に残った元ミステリ研の面々などの模様が描かれる「本土の章」を、日ごと繰り返しながら進むものでした。
そしてセオリーどおりに島で起こる連続殺人と、以前に島で起きた四重殺人事件を調査したりする本土の章が描かれ、

「おー、一人死んだ」

「あ、また死んだ・・・」

「ああ、次はこいつが死んだかぁ」

などと『そして誰もいなくなった』のような展開に、特段驚くこともなく読み進めていったのですが、とにかくどこがどうすごいのか、浅学な私には全然分からない。
至って普通の・・・『金田一少年抜きの金田一少年の事件簿』みたいな印象を受ける始末。
また自分が活字離れしていたこともあって、「この作品がすごい!すごい!って言われるってことは、よほどそれまでのミステリはダメダメだったのかなぁ・・・」などと思い、

「あー早く終わって欲しい」

「で、結末はどうなのよ?」

と、正直もうじれったく、半分飽き飽きしながら読んでいったところに凄まじい勢いでのカウンターアタック。痛恨の一撃。

例の1行を読んだときの、目で追ったときの、確認したときの衝撃ったらなかったです。

「え?あれ?」

「あ、えーと・・・」

「あ!あ!うあ!そういうことかあああああああああ!」

と、頭の中だけではその衝撃を受け止めきれず、思わず声となって口から漏らし、いつの間にか今までのページをめくり直していました。

誰が犯人か?
トリックは?
動機は?

こうした謎には、読んでいくうちに大方予想がついた、という方はかなりいらっしゃるかとも思います。

ですが、この世界に仕掛けられていたもっと大きなトリックに気が付く人は、そうはいないのではないでしょうか?

なるほど、自分は最っ初から、綾辻さんの掌中で踊らされていたのだなぁ・・・と思い、「綾辻行人以降」という言葉が生まれたのも頷けるほどの衝撃でした。

たった1行で読者が抱いていた世界観をひっくり返すとは・・・
なるほど確かにこれはすごいなぁ・・・と思ったものです。

そうして生まれた「新本格」の流れから我孫子武丸さんなどがデビューし、その我孫子武丸さんが乙一さんの才能をいち早く見抜くなどして現在に至る流れを作ったと考えると、「うん、確かにこれはすごいわ」と何度も一人頷いていました。

今読むとちょっと古くさい感じもしますし、こうしたトリックが他の作品でも使われることが珍しくなくなってますので、自分が読んだときほどの衝撃度を得ることは出来ないかもしれませんが、ミステリ好きで大どんでん返しが好きで未読の方になら是非、オススメしなければ!という作品です。

綾辻行人『十角館の殺人』

個人的オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(10/10☆)
個人的満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆(9/10☆)


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