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『時計館の殺人』感想:悲しく歪んだ愛情

今日は綾辻行人さんの館シリーズ第5作目であり、第45回日本推理作家協会賞受賞作でもある『時計館の殺人』の感想です。

まず初めに

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆★(7.5/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9.5/10☆)

です。

綾辻行人さんの館シリーズでも特に長い(文庫本にして600ページ強)のが、この『時計館の殺人』です。

綾辻さんのデビュー作『十角館の殺人』の冒頭で「エラリイ」が述べる「ミステリにふさわしいのは、時代遅れと云われようが何だろうが、やっぱり ね、名探偵、大邸宅、怪しげな住人たち、血みどろの惨劇、不可能犯罪、破天荒な大トリック・・・・・・。絵空事で大いに結構。要はその世界の中で楽しめれ ばいいのさ。但し、あくまで知的に、ね」という台詞が、一連の館シリーズの中で一番よく当てはまってるのが本作だと思います。

本作は、十年前に一人の少女・古峨永遠が死んだ後、それに関連するかのように幾人もの人が死んでいったという「時計館」における一連の事件を扱った作品です。

少女の死より十年後、鎌倉の森の暗がりに建っているその「時計館」で、雑誌『CHAOS(ケイオス・・・たぶんムーみたいな雑誌)』主催による 「オカルト企画」を催すため、同誌の副編集長にカメラマン、そして『十角館の殺人』にも登場した(当時はK**大学の元ミステリ研の学部生だった)同誌の 新米編集者の江南孝明と、テレビ等にも出演している有名”霊能者”光明寺美琴に、W**大学超常現象研究会の面々が集まることになります。

「十角館」同様、建築家”中村青司”によって建てられた「時計館」は、非常に独特な・・・異様な雰囲気を放つ構造になってお り、「新館」には何故か館の入り口側から背を向け、時刻を示す針を持たない無い時計塔が、さらに、事実上窓さえ無い「旧館」には、ちょうど振り子時計を模したような間取りの館中に、108個もの時計がひしめいていたのです。
そしてこの「旧館」に、企画の参加者たちが三日 間外界から完全に隔離するように籠もって、降霊会を開き、亡霊と接触しようとするのですが・・・この「オカルト企画」の趣旨によってクローズド・サークル と化してしまった「時計館・旧館」において、連続殺人が起きてしまうのでした。

すぐそこに、固く閉ざされた扉を隔てた向こう側に・・・「時計館・新館」に、人がいるのに、「探偵役」がいるのに、連絡が取れない、脱出も出来ない。
そんな異常な状況がより恐怖感を増し、読者をより本作の世界へとのめり込ませているように思います。

殺人事件発生後、「時計館・旧館」に言わば「閉じ込められた」人々は、外部への脱出を試みるのですがそれがまず不可能と理解すると、「旧館」の捜索に乗り出します。
しかしそこで発見されるのは、ずたずたに切り裂かれた上に、どす黒い染みが大きく胸元を汚している純白のウェディングドレスなど、奇妙でおぞましいものばかり。

十年前に一体何があったのか?

そして、今起きてるこの状況は何なのか?

そして「時計館」のこの不思議な構造は何なのか?

この館の主・古峨倫典が遺した詩の意味・・・「沈黙の女神」とは何なのか?

本作で描かれている「大きなトリック」には気が付いてしまうかもしれませんが(私も残念ながら気が付いてしまいました)、館が持つ意味、動機や凶 器の必然性など、「大きなトリック」以外にも興味を惹くような謎が様々あり、それらは伏線として最後に綺麗にまとまっていたこともあって、個人的には大変 楽しませて頂きました。

ミステリ好きな方には是非オススメしたい作品でもありますが・・・ちょっと長い作品ですし、「大きなトリック」に気が付いた時点で興味を失ってしまう方もいそうなのが、少し残念ですね・・・。

ともあれ少女・永遠さんに安らかな眠りが与えられることを願って。



綾辻行人『時計館の殺人』

個人的オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆★(7.5/10☆)
個人的満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9.5/10☆)

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