« 『冷たい密室と博士たち』感想:Why done it?(ネタバレあり) | トップページ | 祝!『ゴールデンスランバー』本屋大賞受賞 »

『殺戮にいたる病』感想:先入観の危うさ(ちょいネタバレあり)

※この記事は昨年書かれたものを加筆修正したものです。

我孫子武丸さんの『殺戮にいたる病』をやっと読み終えました自分ですこんばんは。

まず初めに

個人的オススメ度は☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9.5/10☆)
個人的満足度は☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9.5/10☆)

です。

我孫子さんの作品の中でも最高傑作、またミステリ作品の中でも秀作と評判の高い本作。
実は結構前から読んでいたのですけど、読んでる途中で寝ちゃったりして読了までにかなりの日数をかけてしまいました。

というのもこの作品、結構グロいというかエグい描写がありまして、その度に自分は思わず目を背け、本を閉じ、そしていつの間にか寝に入ってしまったりしてたのです。

そんなわけで吉祥寺サンロードの古本屋「外口書店」で買ったときには新品同様だったこの本も、読了後は表紙やページが寝相の悪い持ち主のせいで折れ曲がりまくりの悲惨な体となってしまったのでした。

本は、特にミステリは・・・こうなんて言えばいいのでしょう・・・自分は文章で表現されてる情景を足りてない脳みそをフルに稼働させて想像しながら読むタイプなので、グロ表現とかはやっぱりちょっとキツイのです・・・決して嫌いというわけではないのですが。

でまあ、そんなこんなで本題の感想ですが、面白かったですし、トリックは本当に見事でした。
15年以上前の作品なのですが、まさに現在進行形な問題をトリックに取り入れてるのも色々考えさせられて素晴らしいと思いました。

「殺戮にいたる病」と「現代の家族問題」

うーん・・・本当に色々と考えさせられました。

我孫子さんにとって京大推理小説研究会での先輩にあたる綾辻行人さんの『十角館の殺人』よりも、個人的には好きかもしれません・・・。
衝撃度では『十角館』の方が上かもですが。

ともかく最後の最後でトリックが明かされますと、思わず読み返したくなること受け合いな作品でした。
伏線を回収したくなりますし、トリックを知ってからもう一度読みますと、また違った印象を得ることになると思いますので・・・。

読み方としましては、自分のように日を空けて読まないで、一気に読んだ方がより楽しめると思いますし、衝撃度も違ってくると思います。先に述べた ように、ちょっとグロくてエグい描写がありますので、オススメ度は9.5☆になってしまいましたが、限りなく10☆満点に近い9.5☆ということで。

さて、そこでちょこっとだけ本作の内容を紹介致します。

この作品は、いきなり「エピローグ」から始まります。
連続殺人事件の「犯人」の家に・・・最後の犯行現場に警官らが踏み込み、その「犯人」が逮捕される場面と、その後の公判での出来事、そして判決内容が軽く述べられた後、本編が始まります。
本編ではこのエピローグの前年から話が始まり、次第にエピローグの場面へと話が収斂していくという構成です。

つまり読者は初っぱなから「犯人」が誰か知っている。
なのに騙されちゃうんですね。
この騙し方は上手い!と思いました。

ちなみにこの作品も『十角館の殺人』同様、映像化はかなり難しい(というか不可能?)だと思いますー・・・。

そして以下にはネタバレ(風味)な感想を。
本作を読もうと思われた方は目を背けて下さいませ。




















解説の笠井潔さんが指摘されてるとおり、本書は叙述トリック作品の中でもかなりの傑作だと思いました。
個人的にこのトリックそのものはすごく真摯だと思いますし、卑怯さ・・・つまり「こりゃひどい」と感じることもありませんでしたし、「なんて突飛で強引なこじつけ」とも思わなかったです。

犯人が殺人にいたる動機・・・内に秘めた病理とそれを生み出す現代社会が抱えた問題をトリックに組み込んで上手く話が編み上げられてる感じがして、そこはすごいな・・・と思いました。

で、最後の最後で「犯人」の素性が露わになった時には、他愛もないと思っていた文章の中に如何に多くの伏線が張られていたか驚くことにもなると思います。

ちなみに自分は本書をスススーと読んでいた時、ある言葉に違和感を覚えてしばし天井を見つめて笑ってしまいました。
でも、そこで、大まかな叙述トリックの仕掛けが、なんとなーくぼんやりと形になり始めたんですよね・・・。

その言葉とは「地味な和服」です。

少年時代を思い出す「犯人」の稔。
その頃の稔の母は、友人が羨むほど美しく、授業参観に来る親の中でも一際若く、「地味な和服」に身を包んでも、立ち上る色気は隠しようもないほどで・・・というようなくだり。

そこで思わず、「和服~?授業参観に和服なんて着て来るかな~?(正確には、この文章では授業参観に和服を着て来たとも、そうでないとも取れるような表現になっています)」

そりゃ和服着るような古式ゆかしいご家庭もありますが、少なくとも今までのこの「犯人」のいる家庭の描写からは、そんな感じは微塵も受けなかったのです。
そこでふと本書に仕組まれたトリックの解が、自分の頭の中で、朧気ながら形を成し始めたのでした。まあ、偶然なんですけど。

でも、そういうヒントとなる伏線が至る所にある、とてもフェアな作品だと思います。
2度目読んだら、もうほんと「ああっ!」って唸っちゃっいましたし^^;

「こんなとこにも伏線が!」
「ああ、この表現にミスリードさせられたんだ!」とか^^;






















うん、ともかく読んで良かった作品でした。
ミステリ好きの方には是非一度読んで頂きたい一作です。

我孫子武丸『殺戮にいたる病』

個人的オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9.5/10☆)
個人的満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9.5/10☆)

殺戮にいたる病 (講談社文庫) Book 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

著者:我孫子 武丸
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


|

« 『冷たい密室と博士たち』感想:Why done it?(ネタバレあり) | トップページ | 祝!『ゴールデンスランバー』本屋大賞受賞 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/414914/12426903

この記事へのトラックバック一覧です: 『殺戮にいたる病』感想:先入観の危うさ(ちょいネタバレあり):

« 『冷たい密室と博士たち』感想:Why done it?(ネタバレあり) | トップページ | 祝!『ゴールデンスランバー』本屋大賞受賞 »