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2007年6月17日 - 2007年6月23日

『秒速5センチメートル』と『時かけ』(7)

6の続き)さて、いかに前二作のようなSF色を排したとしても、『秒速5センチメートル』は紛れもないフィクションで、嘘な物語なワケです。

けれど、フィクションだから、アニメだから、何でもありのご都合展開ってのはやっぱヤダ。
フィクションで嘘であるからこそ、ホントっぽいって信じ込ませる、騙し込ませる「説得力」が欲しいし、そういう「フィクションだから」「アニメだから」と か言って割り切る部分と、そうじゃない「説得力」のある部分の絶妙な配分が、共感を生みやすくなるんだと思うし、名作と呼ばれるモノを生み出す一つの鍵に なってるんじゃないのかなって思うのね。

嘘の中にほんの少しだけ本当のことを紛れ込ませるような。
ハッタリの中に、本当に伝えたいテーマを紛れ込ませるような。

『時かけ』はよく言われるように粗がある。SF的設定に。
だけど、そういう「アニメだから」とかで許される部分と「Time waits for no one.」という言葉で端的に表されてるテーマとのバランスがとてもいい。
だからSF的な矛盾というか粗にも目を瞑って、そのテーマの「説得力」に心地よく騙されることが出来た。

対して『秒速』
こっちの最大の説得力・・・つーか心地よく騙すためのギミックは何だろう?って考えた時、それはやっぱりあの新海さん独特の映像美なんだと。
少なくともストーリーで語られてるテーマではない気がする。
一番のギミックは、やっぱりあの映像美。
あの映像美に、心、持ってかれてしまう。
あの描写に「騙されて」しまう。しまいそうになる。
画に脳みそを持ってかれちゃう。
そこは大きな魅力であるけれど、同時に「映像だけ」っていう評価を生む要因にもなってる。

新海さんの「キミとボクがいるこのセカイ」を超えた作品が見てみたい。
あの極上の映像で。
だからこれからも応援していこうと思う俺なのでした。


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『秒速5センチメートル』と『時かけ』(6)ネタバレあり

5の続き)午前中部屋の掃除をしていたら、昔もらった手紙が出てきて、思わずゴミとして出すために積み上げていた本の上に座り込む。
それを見ながら、ついふと笑って、切なくなったりする。そして出る、自嘲気味のため息。

「もし・・・」「あの時・・・」

って、誰にでもあるよなー。
『秒速』でも、もし、貴樹と明里があの時、あの手紙を手渡せていたのならって。

で、まあ、そういった場合での対応が、選択肢が重要なわけで。
それを回想する際の対応もまた大切なわけで。
変わらない過去から何も学び取らず、ただ妄執してても意味が無い。
だから、俺みたいに人生の経験の中で否定的思考パターンが固定化してしまってる人には、『秒速5センチメートル』は危険かも。ハマって危険かも。
過去への妄執の中にポツンとある不確かな一縷の望みを、スパッと断ち切られたよーな作品に見えてしまうかもしれないから。
これって一見いいことのようだけど、「人生の経験の中で否定的思考パターンが固定化してしまってる人」にはとてもキケン。
↓↓な気分だから、ビョウキだから、キケン。
んだから最終話は明確に説明されてないんだろーなー。
スキマを残してる。
解釈のスキマを。

もし明確な結末が用意されていたのなら。

もし運命的な再会とハッピーエンドが用意されていたのなら、「約束」と「過去」を引き摺りながらも、このままじゃダメだと自覚して、それを断ち切ろうともがいてる男にとって、それは危険なあま~いオクスリに。
もし絶望的な再会とバッドエンドが用意されていたのなら、「約束」と「過去」を引き摺りながらも、それをたった一つの寄る辺として日々どうにか生きている男にとって、それは危険なにが~いオクスリに。

最終話の貴樹の笑顔は、吹っ切れて前へ進むことの出来るようになった顔であったり、あの頃と変わらない想いを抱いていた自分を再確認した顔であったり、あるいは、夢想してた約束の場所と現実のそれとの残酷なまでの落差に諦念を感じた顔にも見える。貴樹、この後自殺しちゃいそうだな、とか。

他愛もないストーリーながら見方はすんごく変わる興味深い作品。
DVDで何度も見るのもいいかもしんない。

だから買っちゃいましたとさ。(続く)

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